IAU総会の詳しい決議については、「国立天文台 天文トピックス(233)」をご覧頂くこととして、太陽系の惑星は以下の分類となります。
10年続いた議論「冥王星は惑星か?」
冥王星は、1930年 トンボー(米) により発見されました。冥王星は、軌道が他の惑星の特徴と大きく異なっていたり、 極端に小さな天体であることから、発見の当時から異質な存在とされていました。 現代の指針に当てはめていたら、冥王星は「惑星」と見なされることはなく、「小惑星」と分類されたはずです。
1990年代に入ると、冥王星を含む海王星以遠の領域に多数の小惑星が発見されるようになり、 これらは、エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO) とか トランスネプチューン天体(TNO) という小惑星のグループとして 分類されます。そして天文学者達は、「冥王星は惑星ではなく TNO の一天体である」と考える方が適切であるとの結論に達したのです。
折りしも、小惑星の発見数も急激に増加し、ついに 10000個に達しようとしていました。 そこで、1998年 IAU 小惑星センター では、「記念すべき小惑星10000番を冥王星に付与しよう」との 提案を行いました。この提案は、冥王星を惑星から降格させるものではなかったのですが、 「冥王星は惑星として半世紀以上も社会に受け入れられている」などと社会的にも大きな論争を巻き起こすことになり、 結局のところ、実現には至りませんでした。
この騒動は一旦は落ち着いたのですが、根本的な解決ではなかったために、わずか数年でまたも再燃することになります。 2003年 カリフォルニア工科大(米)により 最大級の TNO セドナ(Sedona) が発見されます。この天体の推定直径はなんと冥王星の 3/4 もある非常に大きなものでした。 さらに、2005年には シェラネバダ天文台(米) や カリフォルニア工科大 が競うように、冥王星の大きさに匹敵するほどの TNO を複数個発見したことを公表します。なかでも、カリフォルニア工科大の発見した 2003UB313 は冥王星よりも大きいことは 確実とされ、「太陽系十番目の惑星を発見」と大々的に報道されたことをご記憶の方も多いでしょう。
現代天文学のこのような背景の下、「惑星とは何ぞや」の議論に決着をつけることが急務となっていたのです。
ケレスは小惑星から準惑星へ
今回、小惑星から準惑星へ再分類されることとなったケレスは、1801年ピアッチ(伊) により発見されました。 軌道は火星と木星の間にあり、当時の天文学者らは、この領域に未知の惑星の存在を議論していた最中のことでした。 しかし、他の惑星と比べてあまりにも小さく、さらには1802年,1804年,1807年 と立て続けに同じような領域に小天体が発見されたため、これらは惑星とは認められず、ひとくくりに「小惑星」と呼ばれることとなったのです。 この200年前の歴史は、今回 冥王星が惑星から準惑星に修正された事情とよく似ていますね。
ケレスの小惑星番号は 1番で、2006年現在では登録された小惑星は 10万個を越えています。 ケレスは自分の重力で球状をしていることが分っているため、「準惑星」となりました。
※ 1802年,1804年,1807年 に発見された小惑星は、それぞれ、パラス,ジュノー,ベスタ と名付けられ、ケレスと合わせて「四大小惑星」と呼ばれます。 (今後もそのように呼ばれるかは、現時点では不明です。)
小惑星と彗星の区別は?
かつて「小惑星」と「彗星」ははっきりと区別されてきました。小惑星は岩石質の小天体,彗星は揮発成分が多く、太陽に近づき長い尾を引く小天体です。 また、彗星は小惑星よりも極端に細長い軌道を持っていることも特徴的です。
しかし、数十年前からこの区別の困難な天体が見つかるようになって来ました。岩石質なのに長楕円の軌道を持つ天体,性質は小惑星なのにいつのまにか尾を引く天体, など。それに小惑星のグループのひとつとされている TNO は、そもそも彗星の起源ではないかと推測されています。
こうなると、「もはや、小惑星と彗星は本来区別することのできるものではなく、単に個性の違いである」と考えられるようになってきました。 今回の議決では、太陽系内の惑星,準惑星と衛星以外の小天体は、統一して「太陽系小天体(Small solar system bodies)」と呼称することとしています。これは、現代の天文学では、小惑星と彗星の区分の問題が背景にあるものと考えられます。
名称 | 太陽からの平均距離 (地球までを1とした比率(AU)) | 公転周期 | 直径 | 発見年 | 発見者 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
水星(Mercury) | 5,791万km (0.39 AU) | 88日 | 4,880km | 古代より既知 | ||
金星(Venus) | 10,821万km (0.72 AU) | 223日 | 12,104km | 古代より既知 | ||
地球(Earth) | 14,960万km (1.00 AU) | 1年 | 12,756km | − | ||
火星(Mars) | 22,794万km (1.52 AU) | 1.9年 | 6,794km | 古代より既知 | ||
木星(Jupiter) | 77,830万km (5.20 AU) | 11.9年 | 142,984km | 古代より既知 | ||
土星(Saturn) | 142,940万km (9.55 AU) | 29.5年 | 120,536km | 古代より既知 | ||
天王星(Uranus) | 287,504万km (19.2 AU) | 84.3年 | 51,118km | 1781年 | ハーシェル(英) | |
海王星(Neptune) | 450,445万km (30.1 AU) | 165年 | 49,528km | 1846年 | ルベリエ(仏),ガレ(独) アダムス(英) |
■ 太陽系の矮惑星の一覧 ■
以下は、IAU の定める太陽系の矮惑星の一覧です。
名称 | 分類 | 太陽からの平均距離 (地球までを1とした比率(AU)) | 公転周期 | 直径 | 発見年 | 発見者 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ケレス(Ceres) | Asteroid | 41,379万km (2.77 AU) | 4.6年 | 952km | 1801年 | ピアッチ(伊) | |
冥王星(Pluto) | TNO | 591,518万km (39.5 AU) | 249年 | 2,306km | 1930年 | トンボー(米) | |
2003UB313 | TNO | 1,012,000万km (67.7 AU) | 557年 | (2,400km) | 2005年 | ブラウン(米) 他 | 直径は推定値 |
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