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2006.5月 シュワスマン・ワハマン彗星(すいせい)がやってくる


2006年3月25日のシュワスマンワハマン彗星
本年5月、彗星が地球に大接近し、肉眼でも見えるほどに明るくなるかもしれません。 最接近は5月中旬ですが、月明かりに邪魔されない5月初旬が観察の好期です。

 彗星(すいせい)は「ほうき星」とも呼ばれ、夜空に長く尾を引く姿でよく知られています。 近年では、1996年の百武彗星や1997年のヘールボップ彗星が出現して、大きな話題となりました。
 彗星は、主に氷や塵(ダスト)でできた小さな天体です。 太陽に近づくと、表面が温められて蒸発がはじまり急激に明るくなります。 「彗星のように現れる」という言葉は、このような性質から産まれたものです。 また、彗星を取り巻くイオンやダスト(塵)を含んだ水蒸気は、彗星をぼんやりとした外観を与え、 さらに成長すると太陽からのプラズマの風に流されて長い尾を引くように見えるようになります。

 ここで紹介する彗星は、シュワスマン・ワハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)です。 この彗星は、1930年にドイツのシュワスマンとワハマンが発見したごく平凡な天体で、約5.4年の周期で太陽に近づくいわゆる周期彗星です。 ところが注目すべきは、1995年に彗星の核が5つに分裂して、50倍も明るくなりました。彗星は分裂すると、内部の気化が進みやすくなり 明るくなるのです。そして2006年の5月中旬には、地球に大接近する軌道が計算されており、分裂から11年経過した今でもその余韻で、 最も大きな核(C核)は肉眼でも見えるくらいに明るくなるとの予想がなされています。 さらには分裂したいくつかの核が時を同じくしてやってくることにも注目です。
 彗星は「水もの」とも言われ、実際に近づいてみないと予想通りに明るくなるか、正確に 予想することは困難ですが、彗星はこれまでのところ順調に明るさを増してきています。 今回のように接近して明るくなる彗星は、毎日その位置も明るさも大きく変化していきます。 今回の彗星は、尾はほとんど見えないか、見えてもたいへん淡いものと推測されます。
たいへん貴重なチャンスですのでこの機会に是非観察して下さい。

関連のページ
  ギャラリー
 :2006年3〜4月 73P/ シュワスマン・ワハマン第3周期彗星
 :2006年 5月 73P/ シュワスマン・ワハマン第3周期彗星


■ 彗星はどこに見える? ■
 以下の図は、彗星の動きを、天球座標と地平座標で表したものです。 分裂した核のうち、大きなC核とB核の予報を示します。 天球座標は、星座の中のどの位置にあるかを見るときに,地平座標は、見える方角と高度を知りたい時に参考にしてください。

シュワスマン・ワハマン彗星の天球座標上の動き(2006年5月)

シュワスマン・ワハマン彗星の地平座標上での動き(2006年5月):目盛りは10°間隔

ステラナビゲータ7をベースに作図


 以下は、シュワスマン・ワハマン彗星の明るさの予報です。 彗星の明るさは「水もの」ですので、大きく異なることもありえます。
シュワスマン・ワハマン彗星の明るさの予報 (出典:天文ガイド5月号/ 誠文堂新光社)
年月日C核の明るさB核の明るさ月 齢備 考
2006.04.304.1等9.0等2.7
2006.05.023.8等8.7等4.7夜半前月明かり
2006.05.043.5等8.4等6.7夜半前月明かり
2006.05.063.1等8.0等8.7月明かり
2006.05.082.9等7.7等10.7月明かり
2006.05.102.7等7.4等12.7月明かり
2006.05.122.5等7.2等14.7満月最接近の頃,月明かり
2006.05.142.5等7.1等16.7月明かり
2006.05.162.6等7.2等18.7月明かり
2006.05.182.8等7.4等20.7月明かり
2006.05.202.9等7.6等22.7月明かり
2006.05.223.1等7.8等24.7月明かり
2006.05.243.3等8.1等26.7
2006.05.263.5等8.3等28.7
2006.05.283.6等8.5等1.3
2006.05.303.8等8.7等3.3


■ 観察の方法と時期 ■
 彗星はぼんやりとした天体ですので、街明かりのあるところでは極端に見えにくくなってしまいます。 最も観察しやすくなるのは5月初旬で、この時期には月明かりの邪魔されない深夜から未明がお勧めです。 最接近の5月中旬は満月が一晩中輝きますので、観察しづらくなるでしょう。明るい月が出ていると淡い彗星は見づらくなります。 なるべく、光害の少ないところに出かけて観察してください。
 今回のような接近して明るくなる彗星は見掛けの大きさが広がってしまうので、双眼鏡など、低い倍率で広く見える光学系の方が楽しめることでしょう。 宇宙館の大望遠鏡では、彗星の頭の部分の拡大した様子を観察することが出来ます。

宇宙館での観察
 彗星は、5月中旬以降は地平線から上ってくる時間がどんどん遅くなってきます。
せんだい宇宙館は休館日(毎週月曜)以外は、毎日21時まで開館(最終入館時刻 20時30分)していますので、 天候が悪くない限り50cm大望遠鏡での観察が出来ます。


■ 関連のニュース ■
国立天文台アストロトピックス(208)「シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星、分裂核がさらに分裂」
国立天文台アストロトピックス(207)「地球に接近するシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星」
国立天文台アストロトピックス(168)「西はりま天文台、来年明るくなる彗星をキャッチ!」


■ 関連のリンク ■
国立天文台「シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星」
アストロアーツ社 「肉眼彗星となる73P/シュワスマン・ワハマン彗星に注目」


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