アンタレスには、極めて近傍に小さな伴星が存在していることが知られています。
この伴星は、主星との等級差から通常は見ることが難しく、実際、この伴星が発見されたのも19世紀に起こった
アンタレス食の観測によるものでした。今回のアンタレス食においても、伴星の検出がひとつのテーマになっておりましたが、
月の背後からアンタレスが出現するに先んじて、5等級の伴星の出現が多数の観測地点で報告されました。
位置天文学の研究の立場からは、この伴星と主星の出現の時間差と観測地の位置から、主星と伴星の位置関係を
精密に得る手がかりとなると期待されていましたが、国立天文台の相馬充先生の研究により明らかにされました。
これらは、すべてアマチュアの天体観測から得られた素晴らしい成果であります。
国立天文台 相馬充氏(位置天文学)のご厚意により、解析の結果を公表いただきましたので、このページにてご紹介いたします。
関連のページ: ギャラリー/ 2005.3.31 アンタレス食
軌道発表者 角距離 位置角 " o Heintz, W.D. (1960) 2.215 276.9 Baize, P. (1978) 2.527 273.7 Pavlovic, R. & Todorovic (2005) 2.677 276.6この値は3月30日(世界時)についてで,3月3日はいずれも角距離が0.001"だけ 大きくなります.軌道周期は上から順に900年, 878年, 1218年でかなり 長いため,短期間では位置関係はほとんど変わりません.最後の軌道は つい最近発表されたもので,観測の際には Baizeの軌道をもとに予報さ れていました.
dSep = +0.062" ± 0.014"ここには、月の平均距離と実距離の比を算入しています。
Reduced by Mitsuru Soma.
以下に,個々の観測に対する整約結果を示しておきます. 相馬 充 Occ of ZC 2366 on 2005 Mar 03 WA Height Observer's Name F/B UTC PA dHeight d " h m s d " 281.874 -0.667 Brenda Culbertson F 114900.05 289.3 +0.067 281.910 -0.600 Brenda Culbertson B 114906.92 Occ of ZC 2366 on 2005 Mar 30 WA Height Observer's Name F/B UTC PA dHeight d " h m s d " 262.650 -0.736 Tomohisa Oono F 162951.88 270.0 -0.072 262.702 -0.808 Tomohisa Oono B 162958.36 262.837 -1.160 Kunio Kenmotsu F 162952.34 270.2 +0.014 262.891 -1.146 Kunio Kenmotsu B 162959.03 263.874 -1.985 Seiji Okamoto F 163017.28 271.3 +0.075 263.929 -1.910 Seiji Okamoto B 163024.08 264.778 -1.468 Shin-ya Narusawa F 163106.31 272.2 -0.019 264.831 -1.487 Shin-ya Narusawa B 163112.87 265.840 -2.008 Hiroshi Yamashita F 163228.38 273.2 +0.112 265.895 -1.896 Hiroshi Yamashita B 163235.28 266.041 -1.986 Kenichi Tanaka F 163244.71 273.4 +0.093 266.096 -1.893 Kenichi Tanaka B 163251.54 268.367 -1.945 Miyoshi Ida F 163411.92 275.8 +0.044 268.419 -1.901 Miyoshi Ida B 163418.59 269.156 -2.009 Akira Asai F 163457.70 276.6 +0.045 269.207 -1.964 Akira Asai B 163504.36 271.071 -2.165 Minoru Owada F 163655.20 254.7 +0.093 271.123 -2.072 Minoru Owada B 163701.98 274.251 -1.231 Kazuhisa Miyashita F 163743.50 281.7 +0.148 274.302 -1.083 Kazuhisa Miyashita B 163750.27 274.771 -1.246 Toru Tsubone F 163824.51 282.2 +0.179 274.821 -1.067 Toru Tsubone B 163831.36 275.429 -0.459 Mikiya Sato F 163953.23 282.8 +0.060 275.479 -0.399 Mikiya Sato B 163959.82 279.445 -0.282 Hiroyuki Tomioka F 164209.62 286.8 +0.047 279.493 -0.235 Hiroyuki Tomioka B 164216.07 280.286 -0.501 Shigemi Numazawa F 164224.27 287.7 +0.028 280.333 -0.473 Shigemi Numazawa B 164230.64 280.700 -0.475 Hiromi Hamanowa F 164200.82 288.1 +0.037 280.747 -0.438 Hiromi Hamanowa B 164207.17 284.716 -0.612 Makoto Satou F 164355.64 292.1 +0.073 284.762 -0.539 Makoto Satou B 164401.96 凡例 WA :ワッツ角(Watts Angle) Height :ビデオ観測により求められた平均月縁からの高さ Observer's Name:観測者名 F/B : F=伴星,B=主星 UTC :現象時の協定世界時 PA :現象の北極基準位置角 dHeight:月縁上の高さの差 * 整約は相馬充氏(国立天文台)によります。