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2004.5月 2大彗星(すいせい)がやってくる

ニート彗星(C/2001Q4 NEAT)と リニア彗星(C/2002T7 Linear)


2004年2月20日のリニア彗星
撮影:佐伯和久(鹿児島天体写真協会)
本年5月、肉眼級の大彗星が、2つもそろってやってきます。 こんなことは、およそ400年ぶりのこと。なかなか見ることの出来ない太陽系の人気者を堪能する絶好のチャンスです。

 彗星(すいせい)は「ほうき星」とも呼ばれ、夜空に長く尾を引く姿でよく知られています。 近年では、1996年の百武彗星や1997年のヘールボップ彗星が出現して、大きな話題となりました。
 彗星は、主に氷や塵(ダスト)でできた小さな天体です。 太陽に近づくと、表面が温められて蒸発がはじまり急激に明るくなります。 「彗星のように現れる」という言葉は、このような性質から産まれたものです。 また、彗星を取り巻くイオンやダスト(塵)を含んだ水蒸気は、彗星をぼんやりとした外観を与え、 さらに成長すると太陽からのプラズマの風に流されて長い尾を引くように見えるようになります。

 ここで紹介する彗星は、ニート彗星(C/2001Q4 NEAT)と リニア彗星(C/2002T7 Linear)で、 それぞれ、2001年8月と2002年10月にアメリカの研究機関で発見された天体です。 これらは、発見後の観測から、彗星としては大型のものであることが分かり、しかも 2004年5月の同時期に地球に接近すると計算されました。
 彗星は「水もの」とも言われ、実際に近づいてみないと予想通りに明るくなるか、正確に 予想することは困難ですが、これら2彗星はこれまでのところ順調に明るさを増してきています。 予想通りに成長すると、双方とも肉眼級の大彗星となり、夜空に同時に二つのほうき星を見上げることが出来そうです。 たいへん貴重なチャンスですのでこの機会に是非観察して下さい。

関連のページ
  ギャラリー:C/2002T7 リニア彗星 その1 (〜2月)


■ 彗星はどこに見える? ■
 以下の図は、2彗星の動きを、天球座標と地平座標で表したものです。 天球座標は、星座の中のどの位置にあるかを見るときに,地平座標は、見える方角と高度を知りたい時に参考にしてください。 図には、彗星の尾も示してありますが、実際にどのくらいに成長するかを予測することは困難ですので、目安程度に考えて下さい。

2彗星の天球座標上の動き(2004年5〜6月)

2彗星の地平座標上での動き(2004年5〜6月):目盛りは10°間隔


 以下は、2彗星の明るさと尾の長さの予報です。 くどいようですが、彗星の明るさや尾の長さは「水もの」ですので、大きく外れることもありえます。
2彗星の明るさと尾の長さの予報 (出典:Cosmic Science/ 誠文堂新光社)
年月日ニート彗星リニア彗星月 齢
明るさ尾の長さ備 考明るさ尾の長さ備 考
2004.04.23日本からは見えない1.0等太陽に最接近3.9
2004.04.25日本からは見えない0.8等10°明け方の低空5.9
2004.04.28日本からは見えない0.7等12°8.9
2004.05.01 1.6等27° 0.5等14°11.9
2004.05.04 1.4等30°以降、夕方の空0.3等17° 14.9 月明かり
2004.05.07 1.3等31°6日地球に最接近0.1等21° 17.9
2004.05.10 1.4等30° -0.1等26° 20.9
2004.05.13 1.7等27° -0.4等34° 23.9
2004.05.16 2.0等23°15日太陽に最接近-0.6等44° 26.9
2004.05.19 2.3等20° -0.5等47°地球に最接近 0.3
2004.05.22 2.6等17° 0.0等40°以降、夕方の空3.3
2004.05.25 2.9等15° 0.7等29° 6.3 月明かり
2004.05.28 3.2等13° 1.4等22° 9.3 月明かり
2004.05.31 3.5等11° 2.1等17° 12.3 月明かり
2004.06.03 3.8等10° 2.7等14° 15.3 月明かり
2004.06.06 4.0等 3.3等11° 18.3
2004.06.09 4.3等 3.8等10° 21.3

(更新:2004.4.7)


■ 観察の方法と時期 ■
 彗星はぼんやりとした天体ですので、街明かりのあるところでは極端に見えにくくなってしまいます。 最も観察しやすくなる5月初旬から中旬は、日没後の薄明の終了する頃の時間帯がもっとも美しい姿を見ることが出来ます。 なるべく、光害の少ないところに出かけて観察してください。また、明るい月が出ていると淡い彗星は見づらくなります。 月が上限(月齢7)〜満月過ぎ(月齢17)頃までは、月明かりの影響を受けやすくなります。
 今回のような大彗星は、双眼鏡など、低い倍率で広く見える光学系の方が楽しめることでしょう。 宇宙館の大望遠鏡では、彗星の頭の部分の拡大した様子を観察することが出来ます。

宇宙館での観察
 2彗星は、いずれも5月に観察しやすくなりますが、見え始める時期が異なります。 せんだい宇宙館は休館日(毎週月曜)以外は、毎日21時まで開館(最終入館時刻 20時30分)していますので、 天候が悪くない限り50cm大望遠鏡での観察が出来ます。この期間には彗星の観察会を予定しています。


ニート彗星の観察
5月4日ごろから日本でも夕方の空に見えるようになります。
動きが速く、日増しに空の高いところで観察できるようになります。
5月中旬に最も成長し、5月下旬以降は急速に遠ざかって見えにくくなるでしょう。

リニア彗星の観察
5月初旬までは、明け方の低空にあり、夕方の空に見え出すのは、5月23日頃からです。 また、その後も太陽の方向に近いので、日没後から一定の時間しか観察できません。 下図を参考にお越しください。 このグラフは、鹿児島における時刻です。


■ 関連のニュース ■
国立天文台アストロトピックス(5)「明け方の東の低空に見え始めたリニア彗星」
国立天文台天文ニュース(598)「ニート彗星と明るさを競う?! 新発見のリニア彗星」
国立天文台天文ニュース(511)「肉眼彗星は確実か、ニート彗星」
国立天文台天文ニュース(475)「肉眼彗星になりそうなニート彗星」


■ 関連のリンク ■
国立天文台「明るい彗星がやってくる」
高校生天体観測ネットワーク
アストロアーツ社 「特集 大彗星がやってくる!」


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