2004年2月20日のリニア彗星 |
撮影:佐伯和久(鹿児島天体写真協会) |
彗星(すいせい)は「ほうき星」とも呼ばれ、夜空に長く尾を引く姿でよく知られています。
近年では、1996年の百武彗星や1997年のヘールボップ彗星が出現して、大きな話題となりました。
彗星は、主に氷や塵(ダスト)でできた小さな天体です。
太陽に近づくと、表面が温められて蒸発がはじまり急激に明るくなります。
「彗星のように現れる」という言葉は、このような性質から産まれたものです。
また、彗星を取り巻くイオンやダスト(塵)を含んだ水蒸気は、彗星をぼんやりとした外観を与え、
さらに成長すると太陽からのプラズマの風に流されて長い尾を引くように見えるようになります。
ここで紹介する彗星は、ニート彗星(C/2001Q4 NEAT)と リニア彗星(C/2002T7 Linear)で、
それぞれ、2001年8月と2002年10月にアメリカの研究機関で発見された天体です。
これらは、発見後の観測から、彗星としては大型のものであることが分かり、しかも
2004年5月の同時期に地球に接近すると計算されました。
彗星は「水もの」とも言われ、実際に近づいてみないと予想通りに明るくなるか、正確に
予想することは困難ですが、これら2彗星はこれまでのところ順調に明るさを増してきています。
予想通りに成長すると、双方とも肉眼級の大彗星となり、夜空に同時に二つのほうき星を見上げることが出来そうです。
たいへん貴重なチャンスですのでこの機会に是非観察して下さい。
関連のページ
ギャラリー:C/2002T7 リニア彗星 その1 (〜2月)
◆ 2彗星の天球座標上の動き(2004年5〜6月)
◆ 2彗星の地平座標上での動き(2004年5〜6月):目盛りは10°間隔
以下は、2彗星の明るさと尾の長さの予報です。
くどいようですが、彗星の明るさや尾の長さは「水もの」ですので、大きく外れることもありえます。
◆ 2彗星の明るさと尾の長さの予報 (出典:Cosmic Science/ 誠文堂新光社)
年月日 | ニート彗星 | リニア彗星 | 月 齢 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
明るさ | 尾の長さ | 備 考 | 明るさ | 尾の長さ | 備 考 | ||
2004.04.23 | 日本からは見えない | 1.0等 | 9° | 太陽に最接近 | 3.9 | ||
2004.04.25 | 日本からは見えない | 0.8等 | 10° | 明け方の低空 | 5.9 | ||
2004.04.28 | 日本からは見えない | 0.7等 | 12° | 8.9 | |||
2004.05.01 | 1.6等 | 27° | 0.5等 | 14° | 11.9 | ||
2004.05.04 | 1.4等 | 30° | 以降、夕方の空 | 0.3等 | 17° | 14.9 月明かり | |
2004.05.07 | 1.3等 | 31° | 6日地球に最接近 | 0.1等 | 21° | 17.9 | |
2004.05.10 | 1.4等 | 30° | -0.1等 | 26° | 20.9 | ||
2004.05.13 | 1.7等 | 27° | -0.4等 | 34° | 23.9 | ||
2004.05.16 | 2.0等 | 23° | 15日太陽に最接近 | -0.6等 | 44° | 26.9 | |
2004.05.19 | 2.3等 | 20° | -0.5等 | 47° | 地球に最接近 | 0.3 | |
2004.05.22 | 2.6等 | 17° | 0.0等 | 40° | 以降、夕方の空 | 3.3 | |
2004.05.25 | 2.9等 | 15° | 0.7等 | 29° | 6.3 月明かり | ||
2004.05.28 | 3.2等 | 13° | 1.4等 | 22° | 9.3 月明かり | ||
2004.05.31 | 3.5等 | 11° | 2.1等 | 17° | 12.3 月明かり | ||
2004.06.03 | 3.8等 | 10° | 2.7等 | 14° | 15.3 月明かり | ||
2004.06.06 | 4.0等 | 9° | 3.3等 | 11° | 18.3 | ||
2004.06.09 | 4.3等 | 8° | 3.8等 | 10° | 21.3 |
宇宙館での観察
2彗星は、いずれも5月に観察しやすくなりますが、見え始める時期が異なります。
せんだい宇宙館は休館日(毎週月曜)以外は、毎日21時まで開館(最終入館時刻 20時30分)していますので、
天候が悪くない限り50cm大望遠鏡での観察が出来ます。この期間には彗星の観察会を予定しています。
◆ ニート彗星の観察
5月4日ごろから日本でも夕方の空に見えるようになります。
動きが速く、日増しに空の高いところで観察できるようになります。
5月中旬に最も成長し、5月下旬以降は急速に遠ざかって見えにくくなるでしょう。◆ リニア彗星の観察
5月初旬までは、明け方の低空にあり、夕方の空に見え出すのは、5月23日頃からです。 また、その後も太陽の方向に近いので、日没後から一定の時間しか観察できません。 下図を参考にお越しください。 このグラフは、鹿児島における時刻です。