星食のビデオ観測の方法


■ビデオ観測はとっても簡単■
 星食の観測自体は大変歴史の古いものですが、ビデオによる観測はごく最近行われるようになったもので、 これからますます多くの期待が持たれる分野です。
 星食のビデオ観測は、特に難しいものではありません。望遠鏡とビデオカメラと正確な時報があれば、 もう必要な機器は揃っています。たったこれだけの機材で第一級の観測を得ることが出来ます。 是非チャレンジして見てください。

■予報の入手方法■
 まず、星食の予報を入手しましょう。主な星食の予報は、「天文年鑑(誠文堂新光社)」や 「天文観測年表(地人書館)」に一年分の予報が掲載されています。また、天文関係の月刊誌 「月刊天文ガイド(誠文堂新光社)」「月刊天文(地人書館)」には、当月の予報が詳しく 掲載されています。いづれも書店にて購入できます。
 インターネットでは、海上保安庁水路部 のホームページから接食の予報を入手できます。 また、このホームページから電子メールにて星食接食の局地予報を提供するサービスも行われています。

■準備するもの■
望遠鏡
 一般的に大口径の望遠鏡の方が、より暗い星の現象を観測できます。 明るい星の現象であれば、口径の小さい望遠鏡でも十分で、一等星の食であれば、 望遠鏡無しでビデオカメラのみでも撮影が可能です。それでも得られる観測精度に変わりはありません。

ビデオカメラ
 家庭用のハンディービデオカメラで十分です。また、最近は天文用としても安価なCCDビデオカメラが 商品化されています。ただし、天文用のビデオカメラは通常レンズが付加されていませんので、 望遠鏡との併用が前提となりますし、レコーダーを別途準備する必要があります。
 ビデオカメラと望遠鏡との接続は、何らかの方法で固定されることをお勧めします。 望遠鏡販売店から各種アダプタが市販されていますので、それらを利用する方法もあります。 もし、固定の手段が無い場合には、ビデオカメラをカメラの三脚に据え付けましょう。

正確な時報
 ビデオ観測によると1/30秒の精度を得ることが可能なため、これに見合った精度を有する時報が 必要となります。もっとも代表的なものとしては、JJYなどの短波時報があります。 短波時報を受信するためには、5〜10MHzを受信できる短波ラジオが必要となります。
 なお、短波のJJYは、2001年3月31日に廃止されました。代わって、1999年6月10日より長波の標準時報(40KHz) が運用されていますが、今のところ入手しやすい受信機がありません。 標準時報に関して詳しくは、通信総合研究所日本標準時グループのホームページ をご覧ください。
短波JJY廃止後でも、外国の報時信号は継続して利用できます。
 短波時報を受信できない場合は、NTTの117番時報サービスがお勧めできますが、 実測によると0.03秒程度の誤差が有り得ます。ただし、携帯電話(PHS を含む)は明らかな遅れがありますので勧められません。 また、GPSの利用による時刻信号を得ることが出来れば、短波時報よりも高精度の時刻保持が可能となります。 具体的には、GPS利用超高精度「GHS時計」GPS利用超高機能「マイコンGHS時計」等をご参照下さい。
ご注意! 電波時計の使用は禁物です !!
1999年6月より郵政省より長波JJYが運用されました。これに伴い、「10万年に1秒しか狂わない」とのキャッチフレーズで 各社より電波時計が発売されています。しかし、この電波時計を星食観測に使用することは禁物です。 実測によると、0.1〜0.3秒の遅れがあるのです。つまり、電波時計は、1秒以内の狂いを保持しつづけるものですので、 観測には他の報時手段が得られない場合にのみ使用してください。

代表的な時刻保持法の比較
 時刻精度(対UTC)携帯性安定性備 考
NTT
電話時報
固定電話約0.03秒×連続10分のみ利用可能
携帯,PHS約0.2秒前後×遅れが大きく高精度の時刻保持には不向き
短波JJY
(5,8,10 MHz)
〜10ミリ秒(伝播遅延)2001.3.31 廃止
長波JJY(40kHz)〜10ミリ秒(伝播遅延)1996.6.10 より運用開始
現状では精度のよい安価な受信機がない
電波時計0.1〜0.5秒×遅れが大きく高精度の時刻保持には不向き
GHS時計500ナノ秒以内GPSを時刻保持に応用した装置

正確な地図
 ビデオの観測精度を活かすには、観測地点の経緯度と標高を 15m以内の精度で求める必要があります。 できるだけ国土地理院の2万5千分の1地形図 (都市部については1万分の1もしくは2千5百分の1都市計画図) 上に観測地を記してお送りください(コピーも可)。 国土地理院の地形図は書店で、都市計画図は市町村役場で入手できます。
GPSの測位の信頼性
GPSによる経緯度の測位は、かつては100mを越える誤差があることも珍しくありませんでしたが、 米国政府によるS/Aの解除(2000年5月)以降極めて正確になっていることが確認されています。 実測によると、GPS受信機ジュピターによる経緯度の測位精度は、受信状態の良い時でわずか10m程度の誤差で、 星食,接食のビデオ観測に要求される精度を満たしています。
しかし、誤差の程度の不明な受信機を使用される場合には、やはり地形図を使用してください。 また、GPS受信機の測地系が不明な場合も使用するべきでありません。
なお、標高のデータについては、S/A解除後でも、数十mの誤差のありえることが分かっております。 標高だけは、GPSの数値を扱うことを避けて、面倒でも地形図から読み取ってください。
■セッティング■
 機器を図のように接続します。短波ラジオ(または電話器)とビデオカメラはライン接続が望ましいところですが、 できなければスピーカからの音声をそのまま録音しても構いません。  一般の(つまり、レンズを外せない)ビデオカメラと望遠鏡の接続は、間にアイピースを入れる必要があります。 ビデオカメラの焦点はマニュアルフォーカスで合わせ、ズームはなるべく望遠側に設定します。 また、ビデオの手振れ防止は映像の遅延の恐れがありますのでOFFにします。

■さあ観測しよう■
 以上の準備が完了したら、いよいよ観測です。予報からおおよその現象時刻は分かっていますが、 観測は現象を挟んで数分間行いましょう。これは、特に短波時報の場合、正分の信号が録音されていないと 秒信号の値が不明となってしまうためです。また、出現の場合は現象前に恒星が見えていませんので、 余裕を持って準備しましょう。

■観測に成功したら■
 星食のビデオ観測に成功されましたら、是非せんだい宇宙館まで送付下さい。ビデオを解析して正確な現象時刻を測定致します。 測定の結果はご提供者にお伝えいたしますと共に、国立天文台相馬充氏に報告され、月縁の研究に活かされます。


 せんだい宇宙館の活動の成果は、星食の研究に活かされています。
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