2013.1.9 太陽系外縁天体による恒星食で歴史的な観測成功

1月9日 明け方 ヴァルナによる16等星の食


■ 関連のリンク ■
IOTA-ES (IOTAヨーロッパセクション) /「Varuna Occults 16mag Star 3UCAC 233-089504 for Central Europe !
アストロアーツ /「国内初、太陽系外縁天体が星を隠す瞬間をとらえた
広島大学 宇宙科学センター /「国内史上初! 太陽系外縁天体による恒星食観測に成功

■ 関連のニュース ■
せんだい宇宙館「2013.1.9 太陽系外縁天体 ヴァルナ による恒星食 」


2013.1.9 東広島天文台による Varuna の恒星食
ヴァルナによる恒星食 / 提供:伊藤亮介様(広島大学東広島天文台)
(クリックすると動画を開始します/38秒 無音声:WMV形式動画 9.6MB)
(更新 2014.11.25)

国内で初めて太陽系外縁天体による恒星食が捉えられた
 冥王星付近からさらに遠い太陽系の外縁には、近年の観測技術の発達により多数の小天体が発見されるようになって来ました。 これらは「太陽系外縁天体」と呼ばれています。
 ブルーノ・シカルディ博士(Bruno Sicardy / パリ天文台)より、1月9日明け方 太陽系外縁天体ヴァルナ (20000 Varuna)による ふたご座の恒星(3UC 233-089504 15.9等)を食する恒星食の予報と観測の協力の依頼が寄せらました。 そして観測に臨んだ日本の2地点で 5時24分頃、食による減光の観測に成功しました。
国内で太陽系外縁天体の恒星食観測が成功したことは、歴史上今回が初めてです。

国内のアマチュア観測家が多数活躍
 食の観測に成功したのは、滋賀県(井狩さん)と広島県(東広島天文台)の2地点で、 九州の2地点では通過(食なし)の観測が得られました。 この観測には、台湾,香港,中国 や、掩蔽帯延長上のヨーロッパでも多数の観測が試みられましたが、 食の観測に成功したのは日本のサイトのみでした。

  (北から)(敬称を略します)
  ○ 食の観測に成功したサイト
       井狩康一  :滋賀県守山市
       広島大学東広島天文台: 広島県東広島市
           /伊藤亮介,森谷友由希,上野一誠,河口賢至,植村誠

  ○ 通過(食なし)を観測したサイト:国内のみ
       影山和久  :熊本県熊本市
       鹿児島大学天文台: 鹿児島県薩摩川内市
           /宮ノ下亮,安藤和真

  ○ 観測の映像を解析中のサイト
       石田正行  :滋賀県守山市
        (映像からは食の有無を確認できない。現在パリ天文台にて解析中。)
 これらの観測成果(※1)は、せんだい宇宙館を通じてパリ天文台に報告されており、今後詳しく解析されます。
 以上のほかにも天候不良などで観測できずの報告も頂いております。ご協力いただきました皆様には、この場をお借りしまして御礼申し上げます。
  ○ 天候不良で観測できなかったサイト(国内のみ:順不同)
         大槻 功  : 宮城県丸森町
         北崎勝彦 : 東京都武蔵野市
         小和田稔 : 静岡県浜松市
         渡辺裕之 : 岐阜県垂井町
         渡部勇人 : 三重県いなべ市
         浅井 晃  : 三重県いなべ市
         辰巳直人 : 岡山県赤磐市
         上野裕司 : 鹿児島県与論町
         早水 勉  : 鹿児島県薩摩川内市(せんだい宇宙館)
 太陽系外縁天体ヴァルナは、2000年11月に発見された冥王星の外側を周回する準惑星の候補天体です。 太陽系外縁の天体は近年の太陽系の天文学では太陽系の成因を知るうえで最も注目されている分野です。
 このような遠方の天体による恒星食を観測することは極めて困難です。 あまりにも遠方であるために、予報の精度が低い,予報そのものが少ない,明るい恒星食はまず有り得ない 等がその理由です。

 今回国内で得られた太陽系外縁天体による恒星食観測の成功は、冥王星による恒星食を含んでも、 歴史的に国内初の記念碑的な成果となりました。また世界的に見ても過去に11回(※2)しか観測されていません。
 今回の星食の観測成果から、ヴァルナの大きさや形状,また大気の組成に関する情報まで得られる可能性が期待されます。

※1 :これらは主に星食のML JOIN を通じて報告されました
※2 :シカルディ博士による調査。冥王星と衛星カロンをのぞく


■ (20000)Varuna による恒星食の観測結果 ■

観測の成果は、パリ天文台のチームにより解析中です。以下は、現時点での暫定的な整約図です。 図中にある 直径1000km の円は比較のために記入したものです。実際の ヴァルナ は、これまでの研究により、かなりつぶれた楕円体であると推測されています。

TNO天体(20000)Varuna による恒星食の暫定的な整約図
Reduced by Tsutomu Hayamizu (Update 2013.2.4)

広島大学東広島天文台により観測された掩蔽による減光。(提供:伊藤亮介様/広島大学東広島天文台)

Observer: Ryosuke Itoh, Yuki Moritani, Issei Ueno, Kenji Kawaguchi, Makoto Uemura
Place: Higashi-Hiroshima obs, Hiroshima univ, Higashi-hiroshima, Hiroshima, Japan
Method: 150cm F12.2 (fl=1830cm) Ritchey-Chretien,High Speed Camera and Spectrograph.
CCD C9100-12 (512x512pix,16um)(Hamamatsu Photonics K.K., No filter every 0.3sec exposure (read out time: 0.006sec)

井狩康一さんの観測から得られた食の変光曲線
井狩康一さん(滋賀県守山市)による冷却CCD で連続撮影された多数の画像から、Jose Luis Ortiz 氏により解析された変光曲線です。 この図は、現時点でかなり暫定的なものですので、今後さらに改良される可能性があります。


The occultation light curve of (20000)Varuna derived from Yasukazu Ikari observation.
This chart has been still very preliminary.
Kindness of Jose Luis Ortiz. (2013.2.4)
※ Jose Luis Ortiz 氏のご厚意により、このサイトに掲載しています。


■ パリ天文台による予報掩蔽帯 ■

現象直前に Pic du Midi 天文台による位置観測を加味した最終的な予報図。(提供:Bruno Sicardy / Observatoire de Paris)
図中のは、広島大学東広島天文台と鹿児島大学天文台の位置。


■ 関連の画像 ■



せんだい宇宙館のビデオ撮影による対象星(撮影 2013.1.9 早水勉)
せんだい宇宙館では、この直後から急速に発生した雲により観測できませんでした。



■ パリ天文台による論文等 ■

パリ天文台の Bruno Sicardy 博士より、この観測の結果をまとめた2本の PDF をお送り頂きましたので、 ここにご紹介いたします。 Sicardy博士,共同研究者の Jose Luis Ortiz氏によると、過去の成果とうまく合わない部分もあり、 現在もなお研究の進行中ということです。ただしいずれもフランス語で書かれています。
(掲載 2014.11.25)

Analyses des occultations stellaires du 8 Janvier 2013 par Varuna, et du 3 Juin 2013 par Chariklo
 P24〜P28 に詳しく記されています。
Plan de la presentation
 口頭発表用の資料です。P8〜P16 に詳しく記されています。


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