2002.12.16 国内初 土星の衛星テティスによる恒星食の観測に成功


2002年12月16日04時(日本時間)頃、東日本で7名のアマチュア天文家により土星の第3衛星テティスによる恒星食が観測されました。 掩蔽された恒星は、おうし座の9等星 TYC1310-02435-1(mag9.1) で、食により約1.2等の減光が起りました。
この予報は、現象の直前にIOTA(The International Occultation Timing Association)より発表されたもので、 国内では掩蔽観測者のネットワークJOIN(Japan Occultation Information Network)で公開されました。 今回のように、惑星の衛星による恒星食が観測されることは世界的にも極めて希れで、国内では史上初のことです。
この掩蔽帯の延長は、ヨーロッパに達していましたが、天候が不良だったようでこれまでに食の観測の成功は2件のみ報告されています。
■ 天文学会予稿 ■(2003.03.24)
この現象の研究成果は、日本天文学会2003春季年会(於:東北大学)にて発表されました。
今回の観測から、衛星の運動を記述する力学的座標系と恒星の基準座標系(ICRF)とを結合するための、貴重なデータが得られています。
以下の図は観測者からの報告に基づき整約計算した結果です。 テティスの実直径は1060kmとされており、それによくフィットする円弧が得られました。 この結果から、テティスの影は東日本を中心に通過したことが判明しました。

テティスによる掩蔽
Reduced by Tsutomu Hayamizu. (Update 2004.1.28)


この現象を観測された方々は、以下の通り。国内初の快挙、誠におめでとうございます。
上の図において、橋本さん,北崎さん,片山さんの3者はほぼ同じ系路上にあります。 またスペインの、Casasさん,Pallaresさん,Schnabelさん らの経路もほぼ同じ経路で重なっております。
なお、橋本秋恵さんの破線部分は、雲に遮られたため減光時刻を特定できないことを示します。

日本国内(敬称略,順不同)
柏倉 満      山形県大江町   VTR  18h56m54.71sより 0.06secかけて減光
                                 18h57m34.79sより 0.06secかけて復光
浜野和天文台 福島県郡山市   VTR  18h56m52.190s 減光/18h57m31.323s 復光
八重座 明    茨城県日立市   眼視 18h56m51.8s 減光/18h57m28.1s 復光
高島英雄     千葉県柏市     VTR  18h56m50.65s 減光/18h57m23.61s 復光
橋本秋恵     埼玉県秩父市   眼視 減光時刻は雲のため不明
                                 18h57m27.79s に復光
北崎勝彦     東京都武蔵野市 VTR  18h56m51.59sより 0.03secかけて減光
                                 18h57m24.63s 復光
片山栄作     東京都三鷹市   VTR  18h56m52s 減光/18h57m25s 復光
内山雅之     三重県尾鷲市   VTR  通過(食現象起らず)

ヨーロッパ
Wojciech BURZYNSKI      ポーランド  眼視  19h01m41.0s 減光/19h02m22.6s 復光
Vitali S. Nevski        ベラルーシ  眼視  19h01m25.41s減光/19h02m05.82s復光
Pic du Midi天文台       フランス    眼視      通過(食現象起らず)
Rui Goncalves           ポルトガル  眼視      通過(食現象起らず)
Oscar Canales Moreno    スペイン    眼視      通過(食現象起らず)
Ricard Casas            スペイン    眼視      通過(食現象起らず)
Hilari Pallares Albalat スペイン    眼視      通過(食現象起らず)
Carles Schnabel         スペイン    眼視      通過(食現象起らず)
F.Izquierdo             スペイン    眼視      通過(食現象起らず)

※ 以上の時刻はすべて世界時(UT)です。日本時間への変換は、UTに9時間を加算して下さい。 


食の観測されたビデオ映像より (掲載:2002.12.25)
以下は、食の観測された、柏倉満さん(山形県大江町),浜野和天文台(福島県郡山市) のビデオ映像から作成した、食の瞬間の1/30秒毎連続画像です。各氏のご厚意によりまして掲載しております。

柏倉満さん提供
食の瞬間の 1/30秒毎の連続画像です。口径30cmシュミットカセグレン望遠鏡にCCDモジュール(WATEC 902H)を組み合わせました。
減光の瞬間増光の瞬間

浜野和天文台 浜野和弘巳さん提供
食の瞬間の 1/30秒毎の連続画像です。口径40cmニュートン反射望遠鏡にCCDモジュール(WATEC WAT-100N)を組み合わせました。
減光の瞬間増光の瞬間


土星の衛星テティスによる恒星食の予報(掲載:2002.12.15)
12月16日03h56mJST(=12/15 18:56 UT)ごろ、土星の衛星テティスによる、 TYC1310-02435-1(mag9.1)の食が国内で観測できる可能性があります。以下に予報図等を掲載します。
食が起こった時の 減光 1.2等,最大継続時間 40s ,掩蔽帯の幅は 1280km です。
国立天文台 相馬充氏によると、実際の経路の誤差は1000km程が見込まれるため、日本のどこで見えてもおかしくないということです。

  相馬充氏(国立天文台)による日本付近の掩蔽帯予報図 (GIF:36kB)
  IOTA による全地球的な掩蔽帯予報図 (GIF:14kB)
  IOTA による土星周辺の衛星配置図 (GIF: 7kB)
(注)以上の予報はすべてUT(世界時)で記載してあります。JST(日本標準時)への変換は、UTに9時間を加算して下さい。


■ 関連のリンク ■
国立天文台・天文ニュース(607)/土星の衛星テティスによる恒星食の観測に成功
瀬戸口貴司氏(東亜天文学会)による整約計算結果
浜野和天文台(福島県郡山市)による観測結果



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