2003.03.発表

土星の衛星テティスによる恒星の掩蔽の観測

せんだい宇宙館,相馬充氏(国立天文台),瀬戸口貴司氏(JOIN),広瀬敏夫氏(IOTA) により日本天文学会2003年春季年会(於:東北大学)にて発表された内容です。
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          土星の衛星テティスによる恒星の掩蔽の観測

早水 勉(せんだい宇宙館),相馬充氏(国立天文台),瀬戸口貴司氏(JOIN),
広瀬敏夫氏(IOTA)

  2002年12月16日未明に土星の衛星による恒星の掩蔽が日本の7名のアマ
チュア天文家によって観測された。

  土星の第III衛星テティスがおうし座の9.1等星 TYC 1310-02435-1 を掩
蔽するという予報は1年余り前にオーストラリアの David Herald によっ
て発表された。彼の予報では掩蔽が見られるのは中国南部、アフリカのサ
ハラ砂漠などとなっていた。しかし、現象の4日前に IOTA
(International Occultation Timing Association、国際掩蔽観測者協会)
会員でチェコの Jan Manek が予報を計算し直し、掩蔽は日本とヨーロッパ
で見られると発表した。この予報により、日本では掩蔽観測者のネットワ
ーク JOIN (Japan Occultation Information Network)を通じて観測が呼び
かけられた。その結果、
柏倉 満(山形県大江町)、浜野和 弘巳(福島県郡山市)、
八重座 明(茨城県日立市)、高島 英雄(千葉県柏市)、
橋本 秋恵(埼玉県秩父市)、北崎勝彦(東京都武蔵野市)、
片山栄作(東京都三鷹市)
の各氏が見事に観測に成功した。惑星の衛星による掩蔽が観測されることは
世界的にも希れで、国内では史上初の快挙である。今回、ヨーロッパでは天
候に恵まれず、2件の観測成功の報告が届いているだけである。

  テティスの大きさはボイジャー探査機によって求められている値を既知と
して、掩蔽の観測結果から、テティスの恒星の座標系(ICRF)に対する位置が
精密に求められた。土星の衛星の暦は D.Harper \& D.B.Taylor (1993)、
A.Vienne \& L.Duriez (1995) らがそれぞれ独立に与えているが、衛星の位
置は良く一致している。これらの暦は主として衛星相互の観測位置に合うよ
うに作られており、そのため土星本体に相対的な衛星の位置は正確であるが、
土星本体の恒星に対する位置の誤差が含まれている。今回の掩蔽の暫定的な
解析から、土星本体の位置 (DE405による) への補正値をして
Δα= +0.010sec ,Δδ= +0.03" が得られた。精度は +/-0.01" 以内で
ある。

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* このページは、日本天文学会2003年春季年会予稿からの転載です。

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