観測に成功されたら...
【2011.2.10 21h36m 太陽系外縁天体 ヴァルナ による恒星食】 (20000)Varuna による 15.3等星の食 / 高速に自転する準惑星候補天体による食に注目 (更新:2011.2.13)
2月10日に予報されていました、TNO天体(20000)Varuna による恒星食に関しましては、 たくさんの皆様方のご協力を頂きまして、心より感謝申し上げます。 結果としては、全国的な天候不良のためにほとんどの地点で観測できませんでしたが、 岩手県洋野町「ひろのまきば天文台」野田司さまから、唯一の成立した観測のご報告を頂 きました。結果は通過(食なし)です。 この観測の依頼元である Bruno Sicardy 博士(パリ天文台)からは、 > Thank you very much for your account, and for you big efforts on Varuna! と、日本の観測者の皆さまの大きな努力に感謝とのコメントを頂きました。 この観測にご協力頂きました皆さまは以下の通りです。お礼も兼ねましてご紹介させて いただきます。 【通過(食なし)】の観測成果 ひろのまきば天文台(岩手県) 野田司さん 【天候不良】(順不同) [個人の観測者] 浜野和弘巳さん(福島県) 冨岡啓行さん(茨城県) 大場富士夫・高島英雄さん(千葉県) 北崎勝彦さん(東京都) 小和田稔さん(静岡県) 二宮修さん(愛知県) 渡部勇人さん(三重県) 赤澤秀彦さん(岡山県) 中島洋一郎さん(岡山県) 影山和久さん(熊本県) 上野裕司さん(鹿児島県与論島) [公開天文施設,大学] なよろ市立天文台(北海道) 村上恭彦さん・佐野康男さん 仙台市天文台(宮城県) 小石川正弘さん パレット大崎(宮城県) 遊佐徹さん 国立天文台(東京都) 佐藤幹哉さん ハートピア安八天文台(岐阜県) 船越浩海さん他 ダイニックアストロパーク天究館(滋賀県) 井田三良さん みさと天文台(和歌山県) 豊増伸治さん 美星天文台(岡山県) 綾仁一哉さん 鹿児島大学(鹿児島県) 面高俊宏さん他 せんだい宇宙館(鹿児島県)
この現象は、Bruno Sicardy氏(パリ天文台) により、観測可能性のある日本での観測 を呼びかけられており、このサイトにてご紹介します。 海王星以遠に存在する多数の天体は「太陽系外縁天体(TNO)」と呼ばれます。TNO天体 は近年の観測技術の進歩により多数発見されており、太陽系の起源を研究する上で極めて 重要です。 このヴァルナ(20000 Varuna) は、エリス,ハウメア,マケマケ 等と同等の大きさを持つ と考えられており「準惑星」の候補天体です。また、光度曲線の観測から高速で自転する ことが分かっており、かなりつぶれた楕円形状を持つと推測されています。 TNO天体は極めて遠方に存在するために、予報の精度を確保することが困難で、また動 きが遅いために恒星食の観測そのものが滅多に得られません。今回の恒星食は、日本国内 でTNO天体による恒星食が観測される絶好の機会です。 ただし対象星が 15.3等 と極めて微光であるために大口径の望遠鏡が必須となります。 Sicardy氏によると、30〜50cm口径の望遠鏡であれば、1〜2秒の露出(蓄積)で撮影できるだ ろうとされます。また、現状では +/-1500km の誤差を含んでおり掩蔽を起こさない可能性 もあります。 現在までに発表されている、Sicardy氏による予報を以下に示します。 Bruno Sicardy博士(パリ天文台)による予報ページはこちら 最新の予報 (更新:2011.2.2) ○ 図中の大きな●は、地球の中心の最接近時刻は 21h36m10s(日本時間) です。 ○ センターライン上の小さな●は、毎分正秒の位置を示します。 ○ 実線は予報掩蔽帯で 1000kmの幅を示します。 ○ 予報掩蔽帯の両側の点線は、およその予報誤差(1σ)です。 食の起こる可能性がある地域と予報の誤差 ○ 名目上の掩蔽帯は北海道を通過していますが、+/-1500km程度の誤差(1σ)が推定され日本全国が対象地域です。 ○ 現象時刻の予報の誤差(1σ)は 70秒程と見られますが、さらに大きな誤差を含むこともあり得ます。 TNO天体(20000 Varuna)の情報 ○ 推定直径は 1000km だが、高速の自転によりかなりつぶれた楕円形状である ○ 2010.2.19 ブラジルで食と通過の観測が各1地点で得られており、つよい楕円形状を示唆している。 ※ この予報は今後も改良される可能性があります。
【注目】 ■ 2011.02.10 21h36m JST 恒星 :2UCAC 41014913 15.3等 (=USNOB 1162-0142675) 赤経 07h 35m 38.8580s,赤緯 +26°16' 06.522"(J2000) ふたご座 TNO天体(20000)Varuna 20.1等 推定直径 1000km 減光 :約 4.8等 最長継続時間: 45秒程 掩蔽帯:日本,ハワイ 備考 :極めて遠方の天体であるために誤差を大きく見る Star : 2UCAC 41014913 (mag15.3) Asteroid : (20000)Varuna (mag20.1) 視野5度平方 The SKY 6 により作成 視野2度平方 The SKY 6 により作成 視野30分平方 The SKY 6 により作成 DSSによる 16×16' 写野イメージ Bruno Sicardy氏提供 DSSによる 8×8' 写野イメージ Bruno Sicardy氏提供 Bruno Sicardy(パリ天文台)による予報ページへ 掩蔽帯経路図 等
上野裕司氏による撮像(クリックで拡大) 上野裕司さん(鹿児島県与論町)から、対象星野のCCD画像をお送りいただきましたので、ご厚意により掲載いたします。 上野さんのコメントより抜粋 今回はTNOによる掩蔽ということで、小惑星は20.1等級ととても暗く恒星も15等級台と暗いため、25cm反射では短時間露光 での確認は厳しいかと予想したのですが、結果は正反対で3秒露光1枚の画像では階調反転及び強調処理すると16等級の恒 星が確認でき、掩蔽対象の15.3等の2UCAC 41014913は3秒未満の露光でも写すことができます。 予想される減光光度が約4.8等とのことなので、上記露光時間なら掩蔽が起これば減光ではなく、間違いなく写らなくなる ので小口径でも案外確認がしやすいかもしれません。 また、掩蔽対象が分かっているので、写野を全て取り込む必要は無いため取り込む範囲を小さくしてPCへの読み込み時間 を短縮すれば市販の冷却CCDでも掩蔽時間の測定の精度が上がるのではないかと思います。 肝心の小惑星20000Varunaですが、画像を見てもらえば分かるようにそれなりの画像処理はしていますが、短時間で写って しまいました。添付画像は3分と5分それぞれ4枚ずつの8枚合計32分ですが、3分x4枚の画像でも辛うじて存在を確認出来ま す。 添付画像はガイドや光軸、スケアリング等の不良で星像が流れてしまっていますが実際に観測される方々の参考になるの ではないかと思います。 小口径では微妙な光度変化の測定は難しいかもしれませんが今回の撮影結果と減光幅を考えると、小口径でもある程度F値 が大きければ有為ななデータが得られるのではないかと思います。
必要なデータは、
1.観測者氏名および氏名のローマ字標記
2.観測地および観測地の経緯度と標高,測地系
3.観測開始と観測終了の時刻
4.減光が観測されたか? 減光が観測されなくとも重要なデータです。
5.減光がおきた場合の時刻:減光開始の時刻および減光終了の時刻
6.観測機材
7.時刻保持の方法
です。観測は眼視によるものでも重要なデータとなりますが、可能な方は、是非
ビデオによる観測をお願いいたします。時刻保時のためには、極力、GPS時計、
短波時報(外国)などの正確な時報を用いてください。固定電話による117時報も
0.03秒程度の信頼性があります。携帯電話の時報、電波時計、は1秒以下の遅
れがありえますので、前述の時報が得られない場合に使用してください。