2002.3.30 おとめ座74番星によるグレージング(接食)結果


 2002.3.30 午前4時55分頃、南九州で見られた おとめ座74番星=ZC1941(mag4.7)による接食(南限界)の結果です。
ほとんど満月の上に、うす雲の広がる悪コンディションの中、 せんだい宇宙館と鹿児島天文協会の合同チーム(4ポイント5名)は、鹿児島県入来町にてこの現象の観測に望み、 2ポイントでビデオによる極めて高精度のデータの採取に成功しました。このうちの1ポイントは昨年完成した 鹿児島大学の1m口径(観測者/前田利久,江副和彦)によるものです。

これらの観測の結果、月縁の不確定な部分を補完する精密なデータを得ることが出来ました。 従来より知られているワッツのデータは、実際には高すぎることが分かります。
以下に、国立天文台相馬充氏による整約結果を示します。

74Vir 接食
Reduced by Mitsuru Soma.


Graze       of ZC  1941 on 2002 03 29          Basis = 99B
    Star  J2000 Pos.  13 31 57.885  -0.696   - 6 15 20.94  -4.34
          Mag  4.68  Sp M3III        Err in pos   0.01  0.00     DS Code
          SD-05 3714     ZC 1941     XZ 19454     SAO 139390     PPM 196601
          HIP  66006

   WA   Height   WH   Diff   l     b    Observer's Name    PhenC      UTC
    o     "      "     "     o     o                               h  m   s
187.50 -1.469 -1.00b-0.47 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     DD 1  19 55 20.01
187.76 -1.505 -1.00b-0.50 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     RD 1  19 55 29.13
187.92 -1.517 -1.12a-0.39 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     DD 1  19 55 34.66
187.99 -1.520 -1.10a-0.42 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     RD 1  19 55 37.19
188.08 -1.521 -1.11a-0.41 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     DD 1  19 55 40.21
188.27 -1.517 -1.04 -0.47 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     RD 1  19 55 46.90
188.56 -1.490 -0.75 -0.74 +2.72 -4.65 Tsutomu HAYAMIZU     DD 1  19 55 57.16
187.51 -1.419 -1.00b-0.42 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      DD 1  19 55 20.75
187.74 -1.451 -1.00b-0.45 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      RD 1  19 55 28.76
187.93 -1.465 -1.12a-0.34 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      DD 1  19 55 35.52
187.98 -1.467 -1.11a-0.36 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      RD 1  19 55 37.02
188.17 -1.468 -1.11 -0.36 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      DD 1  19 55 43.94
188.24 -1.466 -1.07 -0.40 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      RD 1  19 55 46.28
188.57 -1.437 -0.74 -0.69 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      DD 1  19 55 57.79
189.00 -1.349 -1.00b-0.35 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      RD 1  19 56 12.87
189.64 -1.122 -0.60a-0.52 +2.72 -4.65 Toshihisa MAEDA      DD 1  19 56 35.06
189.81 -1.041 -0.30a-0.74 +2.71 -4.65 Toshihisa MAEDA      RD 1  19 56 41.00


凡例
WA    :ワッツ角(Watts Angle)
Height:ビデオ観測により求められた平均月縁からの高さ
WH    :ワッツの月縁図による高さ(Watts Height)
       後続の"a" は外挿のため精度がやや悪い,
       "b" はワッツのデータがほとんどないため大きな外挿を要し精度がかなり悪いの意.
Diff  :Height と WH の差
l,b   :月の秤動(l,b)
Observer's Name:観測者名
Phen  :現象 (DD:暗縁からの潜入,DB:明縁からの潜入,RD:暗縁からの出現,RB:明縁からの出現)
C     :観測の確かさ("1" は "現象は確かである" の意)
UTC   :現象時の協定世界時

* 整約は相馬充氏(国立天文台)によります。
以下、整約計算者相馬充氏によるコメントです。(部分)
**** この付近の月縁はほとんどカッシーニ領域ですが,この接食の秤動付近に対しては ワッツ角が 170°付近について,秤動のわずかの違いで月縁プロフィールが大きく変化することが ZC 2826 (1995年9月5日等) やZC 552 (1971年12月29日等) の接食などから知られていました. 今回の観測で188°付近も変化の激しい場所であることが ZC 1821 (1980年5月25日)の接食 などとの比較からわかってきました.貴重な観測結果がまた一つ得られたことになります.


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