1998.10.9 アルデバラン食の観測成果

 国立天文台相馬充氏の呼びかけで、全国でビデオによる観測が行われました。
この現象の研究成果が'99.3月25日の日本天文学会春季年会(於:京都大学)にて発表さました。
なお、このビデオの解析はせんだい宇宙館にて担当しました。
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分野:位置天文学  キーワード:星食解析,月縁

アルデバランの星食のビデオ観測による月縁地形

相馬 充 (国立天文台),早水 勉 (せんだい宇宙館)


 星食観測の目的としては主として

1. 月縁の地形を正確に求め,それに基づいて過去の日食観測を解析して
   太陽半径の変化を求め,それが地球気候の温暖化に与える影響を調べる
2. Hipparcos 星表と従来の FK5 基本星表の固有運動システムの差が,
   VLBI 等による基本星表の歳差定数への補正値と矛盾していることから,
   Hipparcos 座標系の固有運動システムに誤差がある可能性があり,
   その誤差を解析する

があげられる.1 等星の星食は望遠鏡なしでも観測可能であり,ビデオ観測
を行なえば,現象の時刻を 1/30 秒の精度で求めることができる.これは
月縁地形がほぼ 30m の精度で求められることになり,この精度は
1994年に測定された現在最も精度の良い Clementine 探査機による月の
地形の決定精度 (最も良い場所で約 50m) をしのぐものである.
さらに,Clementine が走査した月面上の経度の間隔は約 3゜で
あり,そのデータから月縁の地形を求めることは不可能である.

 1998年10月 9 日夜には 1 等星アルデバランの星食が日本各地で見られた.
そこで,その現象のビデオ観測を一般の方にも呼びかけた.
保時法としては,JJY 等の時報の同時録音のほか,全国での同時性が
確実な衛星テレビの画面を現象前後に録画していただくという方法を
採用した.衛星テレビの画面と正確な時刻の対応は国立天文台の原子時計を
使用し,また,録音されている時報とビデオのコマとの対応は
せんだい宇宙館の視聴覚設備を使用して行なった.

 観測結果の解析から,ワッツ角で 52゜から 59゜まで (潜入側) と
283゜から 290゜まで (出現側) のワッツの月縁図に対する補正が得られた.
詳しい結果は講演に譲るが,補正値は,平均的には潜入側で -0.25 秒角,
出現側で +0.18 秒角と求められた.なお,この時の月の秤動は
l = +6.2゜, b = +7.1゜であった.
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* このページは、日本天文学会1999年春季年会予稿からの転載です。

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