2005.7.10 X線天文衛星「すざく」の打上げ成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月10日に内之浦宇宙空間観測所から、M−V型ロケット6号機 の打ち上げに成功しました。搭載されていた人工衛星(X線天文衛星ASTRO−EII)は無事に軌道に投入され、 「すざく(朱雀)」と名づけられました。

レイヴン・フォト(鹿児島市)から、貴重な写真数点と解説の記事を頂きました。

M−V型ロケット6号機の打上げ

M−V型ロケット6号機の打上げ


M−V型ロケット6号機 広角

M−V型ロケット6号機


JAXA幹部

打上げ成功を喜ぶJAXA幹部の皆さん
左から鶴田浩一郎理事、三戸宰理事、間宮馨副理事長、松尾弘毅宇宙開 発委員会委員長代理、井上一教授(衛星主任)以上敬称略

衛星関係者

「すざく」の順調な飛行を喜ぶ打上げ・衛星関係者の方々
左から小山勝二(京都大学教授)、牧島一夫(東京大学教授)、 井上一(宇宙航空研究開発機構教授)、森田泰弘(同教授)、嶋田徹(同助教授)、 リチャード・ケリー(NASAゴダード宇宙飛行センター主任研究員)、国枝秀世(名古 屋大学教授)以上敬称略

的川泰宣教授

広報統括執行役 的川泰宣教授

レイヴン・フォトのレポートより
 X線天文衛星ASTRO−EUを搭載したM-V−6号機が7月10日午後0時30分、鹿児島県肝付町の内之浦 宇宙空間観測所から打ち上げられました。衛星は軌道に無事投入され、「すざく(朱雀)」と名づけられまし た。「すざく」はその後、スピンダウン(回転停止)・太陽電池パドル展開・姿勢制御・X線望遠鏡伸展などの スケジュールを無事こなし、順調に飛行しているようです。今後、打ち上げ直後の近地点高度約300キロか ら徐々に高度を上げ、約2週間かけて同約560キロの観測軌道に到達。初期運用を経て、8月中旬から本 格的な観測活動に入る予定です。
 ASTRO−EUは、1999年にM-V-4号機の打ち上げが失敗して失われたASTRO-Eと同じ設計の衛星です。 わが国5番目のX線天文衛星で、全長6.5メートル、胴体幅1.9メートル、太陽電池パドルを開いた翼幅は5. 4メートル、重量は1.7トンです。X線反射鏡など4種類の観測機器を搭載しています。これまでよりも広い 帯域のX線を高精度に観測することができ、宇宙の構造形成や銀河団の成り立ち、ブラックホールの構造 解明などに役立つと期待されています。既に1999年に打ち上げられたEUのXMM−ニュートン、合衆国のチ ャンドラーという2つのX線天文衛星と協力しての国際観測体制がようやく整うことになります。
 「すざく」の名前の由来となった朱雀は、青竜(東方)、白虎(西方)、玄武(北方)とともに、南方の宇宙を 守る想像上の神獣です。奈良県飛鳥村のキトラ古墳の南壁に描かれていたことでも知られています。宇宙 航空研究開発機構(JAXA)では、@失敗した最初のX線天文衛星の次の衛星が「はくちょう」であり、同じく 失敗した衛星の後を継ぐ意味で赤い鳥の「朱雀」はふさわしい。A日本の古代に高い文化を誇った飛鳥時 代の藤原京、平城京において、朱雀門・朱雀大路などが造られており、4番目の衛星「あすか」から引き継 ぐのにふさわしい。B朱雀が守る南方宇宙には、おとめ座銀河団など、「すざく」が観測対象とする天体・空 域が多い、などと命名の理由を説明しています。
 今回の打ち上げは、宇宙科学研究所(ISAS)と宇宙開発事業団(NASDA)がJAXAに統合されて、初の M−V打ち上げということでも注目されていましたが、最高のスタートを切ることができたといえそうです。打 ち上げ直後の会見では、ロケット打ち上げ関係者、衛星開発担当者とも、まださまざまなスケジュールが残 っているとはいえ、ほっとした表情で打ち上げの成功を喜んでいました。そのなかで特に印象的だったのは、 衛星製作に携わった東京大学の牧島一夫教授でした。牧島教授は第1号の「はくちょう」からX線天文衛星 に関わっている方です。今回の「すざく」の成功は、ASTRO-Eの開発が始まって10年目になります。4号機 の失敗から5年間の苦労を、「これまでは他人の家のご飯を食べさせてもらっていた(米欧のデータで研究 しなければならなかった)」などと表現。「これでようやく、自分の家で作った材料で、飯を食わせてやること ができるようになった」と話し、このASTRO-EUの製作に携わった人の労をねぎらいつつも、前衛星の打ち 上げ失敗によって研究室を去っていくことになった人々に思いをはせているようで、最後まで笑みはありま せんでした。
 さて、M-V−6号機は、全長30.8メートル、直径2.5メートル、重量140.4トンの中型固体燃料ロケットで す。2003年に打ち上げた工学実験探査機「はやぶさ」に続いて、2回連続の成功です。南日本新聞で指摘 されていたコストが高いという問題も残っているようですが、4号機の失敗の原因となったノズル部分の改 良、超音波検査の追加などにより、信頼性は格段に向上したようです。2005年度中に赤外線天文衛星 ASTRO-F、2006年度に太陽観測衛星SOLAR-Bの打ち上げが予定されるなど、今後も日本の科学衛星の 打ち上げに活躍が期待されています。
(写真 及び 記事提供 レイヴン・フォト)