[JOIN:10033] Comments about the incoming occn. by a binary TNO (Pacific only) This is J.Lecacheux's information of the occultation of a bright star by (66652) 1999 RZ253. 相馬です.  10月4日夜に太陽系外縁天体 (TNO) である (66652) 1999 RZ253 によ る6.5等星 HIP 111398 の掩蔽が予報されています.Goffin 予報では掩 蔽帯がニューギニア島などを通っていますが,掩蔽する天体が地球から 遠いために,位置のわずかの誤差で掩蔽帯が大きくずれます.そのため 日本でも掩蔽が観測される可能性があるとされています.(この恒星の 等級は Goffin 予報に V.mag. = 6.71 とありますが,この 6.71 とい うのは Hipparcos 星表にある Hipparcos システムの等級 (V ではない) のようです.同じ星表には Johnson システムの V 等級が 6.54 とあり ますので,6.5等星という方が適切でしょう).恒星もかなり明るいので 注目に値する現象です.せんだい宇宙館のサイト http://sendaiuchukan.jp/asteroid/0710-66652.html もご参照ください.  この現象について,フランスの J.Lecacheux さんから情報をいただ きました.以下はその情報です.  この小惑星は明るさが22等で,1999年から2004年までの間に31個の位 置観測がある以外は,2004年5月以降,新しい位置観測の報告がありま せん.そのため,現在の予報位置の精度がかなり悪くなっています.そ れでも現在では,Goffin 予報に使われた軌道要素 MPO48771 より新し い軌道要素 MPO101945 が発表されていますので,その軌道要素で予報 を計算しなおしました.その結果は,掩蔽帯が地球の北西側に 0.75", 実距離にして 22000km もずれ,最接近時刻も45分も遅くなる (つまり, 最接近は日本時で21時16分ごろ) ということになりました.ということ で,掩蔽が地球上で見られる可能性はかなり低くなりました.しかし, 予報の誤差 (1σ) は掩蔽帯に垂直な方向に 23000km,帯に沿った方向 には 58000km (時間にして50分) もあるため,地球のどこかで掩蔽が起 こる可能性もまだ10%あります.各観測者について考えると,掩蔽が見 られる確率は 1/400 くらいと見積もられ,誤差も 2σ まで考えると, 観測すべき時間は予報中心時刻の前後それぞれ100分にもなるというこ とになりますが,このような明るい恒星の TNO による掩蔽はたいへん 珍しい現象ですので,観測可能な方は,観測に挑戦されると良いでしょ う (ただし,掩蔽が観測できる可能性はとても低いということを覚悟し てください).  もう1点,この現象で注目すべきは,この TNO がバイナリー小惑星で あるという点です.明るさから予想される主星の直径は 170km 程度, 伴星の直径は 140km 程度で,発表されている主星の周りの伴星の軌道 要素から計算すると,伴星による掩蔽は主星による掩蔽より約5分遅く, 掩蔽帯も伴星の方が 3000km から 4000km 程度南になります (たとえば, 主星による掩蔽がシベリア付近で見られたとすると,その約5分後に伴 星による掩蔽が日本で見られるということになります).  以上です.                            相馬 充